新型コロナウイルスの感染リスクは、気をつけるポイントさえ押さえていれば、かなり減らすことができます。ポイントを知らずにがんばっても大変なので、ウイルス研究歴33年のプロから効果的な新型コロナ対策を学んで、楽に防御しましょう。
今回の内容は、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸さんが、参議院議員のやながせ裕文さんのYouTubeチャンネル「やなチャン!」に出演したときのお話を元に情報を付け足したものです(2020.4.20配信分)。
理解しやすいように話題の流れを変えている部分もありますので、詳しい内容は動画でご確認ください。
監修:宮沢孝幸さん
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新型コロナ入門
なぜ獣医が専門家会議に必要なの?
コロナウイルスは動物(コウモリ)由来のウイルスである。動物由来ウイルス研究は、獣医の仕事。新型コロナウイルスが拡散する何十年も前から研究しているため、獣医の方がコロナウイルスに詳しい。
今、専門家会議に一人だけ獣医が入っているのだが、コロナウイルスの専門家が入っていないことが問題。専門家会議にもっと獣医を増やせば、より具体的な対策が出せるだろう。
今回のウイルスは新型コロナウイルスにゃ。コロナウイルス自体はずっと前からあるにゃ。
以前多数の死者を出したSARSとMERSもコロナウイルスによる感染症だったんだよ。でもなぜか専門家会議には、コロナウイルスの専門家が入っていないんだ…。
新型コロナウイルスの特徴は?
動物に感染して重症化するコロナウイルスは多いが、人に感染するコロナウイルスが重症化するのは珍しい。SARSとMERSは人に深刻な被害をもたらしたが、それ以前のコロナウイルスは人に感染しても重症化することなく自然治癒していた。
超強力なSARSとMERSに比べれば、新型コロナの毒性ははるかに弱い。弱いがゆえに持続感染しやすいので、性質は動物のコロナウイルスに近いと考えられる。
持続感染とは、感染した後もウイルスが体内からなかなか消えないってことだよ。
西浦流「接触機会8割減」と宮沢流「感染機会8割減」の違いは?
「接触機会8割減」とは、できるだけ人と接触しないこと。それに対して「感染機会8割減」とは、人と接触はするがウイルスに感染しにくい行動をとるという点が大きく違う。
宮沢流「感染機会8割減」とは、ウイルスや感染に対する正しい知識を持って一定のルールの中で行動して、経済活動を大きく止めることなく感染拡大を防ごうという考え方。「半自粛」と呼ぶこともある。
ただし、すぐに外に出ていいということではない。医療崩壊を防ぐために一定期間の自粛は場合によっては必要である。ルールをきちんと学んだ人は、外に出ても感染拡大につながる行動はしないので、まずはルールを学ぶことが大切。
にゃんこ先生は今まで、新型コロナよりずーっと危険なウイルスの研究を何度もしてきたけど、ルールを守ってるから感染してないにゃ。
33年もウイルス研究してきた人だから言えることだよ。ひたすら家にこもる生活を、この先ずっと続けるのは難しいから、まずにゃんこ先生ルールを学んでから外に出ようっと。
新型コロナ対策
どのくらいの飛沫(ツバ)の量で感染するの?
ざっくり言うと1滴の半分くらいの量で感染する。マスクなしで話せばリスクはあるが、小声で話せばツバは飛びにくい。お互いがマスクをして小声で話せば、ツバから感染するリスクはほとんどない。ただしきちんと換気されている環境という条件付き。
どれくらいの量で感染するかという視点が欠けたまま発言している先生方が多いが、これはしかたがない。普段から感染実験を頻繁にやっている先生でないと、このあたりの感覚はわからない。
どれくらいの量で感染するかなんて考えてなかったにゃ。1コでもウイルスがあれば感染しちゃうと思ってたにゃー。
これ言われるまで気づかない人多いよね。ウイルス0コになるまで完璧に手洗いしなきゃって思って、せっけんつけて必死にゴシゴシしてたよ。
どのくらい手洗いすればいいの?
せっけんで念入りに洗えば完璧かもしれない。しかしそれよりも大切なことは、水で15秒だけでもいいのでとにかくこまめに洗うこと。何かを触ったらすぐに手や指先を洗う、洗えないときはウエットティッシュなどで拭き取ることを心がける。
えっ!?お水で15秒だけでもいいの?これならワタシにもできそうにゃー。
1回念入りにやるよりも、どこか触るたびにこまめに洗う方がずっと効果的なんだ。
映画館は感染しやすいの?
マスクをして静かにしていれば、ただ座っているだけで感染することはほとんどない。しかし手すりなどにウイルスがついていて、そこを触った手で目鼻口を触るとウイルスが運ばれて感染するということはある。
マスクをしていても、近くで感染者がくしゃみをすれば感染のリスクは高まる。特に布マスクは目が粗いためウイルスを通しやすいが、広い空間で換気されていれば、それほど気にする必要はない。
コメディ映画でも大声で笑うのは我慢しておいた方がいいにゃー。
鼻と口はマスクでガードできるが、目は大丈夫?
鼻と口だけではなく目から感染するリスクもあるので、気をつけた方がいい。メガネはしないよりはした方がいい。メガネをしていても上や横から入ることもあるので、花粉症用のメガネならより安全。
目からも感染するし、傷口からも感染するから気をつけようねー。
新型コロナが弱くなる温度は?
基本的にはインフルエンザ対策と同じように考えればいい。温度は高ければ高いほどウイルスはどんどん死滅する。
温度が高いと新コロは死ぬにゃー。
熱い国でも感染拡大しているので、夏になっても感染は止まらないの?
温度が高くなればウイルスが壊れるスピードは高くなるので、35℃以上くらいになれば外では接触感染しにくい状況になる。ただし、飛沫が直接かかったり換気しない室内で長時間過ごしたりすれば、感染する。
夏になったらいったん感染が収まるんじゃないかって期待してるよー。
エレベーターのボタンに残っているウイルスでも感染するの?
感染リスクはある。しかしボタンを触ったとしても、その後に目口鼻を触らなければ、感染リスクはなくなる。
自分がよく使う指はどこかよく意識して、どこか触ったらウイルスがついたと考えて、すぐに洗ったりウエットティッシュで拭き取ることを徹底する。丁寧に洗う必要はないが、こまめにキレイにすること。
顔を触るクセがある人は、気をつけにゃいとにゃー。
外出先で使ったぬれタオルはどうすればいいの?
ぬれタオルを持ち歩くときはフリーザーバッグなどに入れて、帰宅したらぬれタオルを取り出してそのまま洗濯機で洗っていい。洗濯すれば洗剤でウイルスは壊れる。
おうちに帰ったら、外で使ったぬれタオルは洗濯機にポイするにゃ!
家族みんなで使っている手拭きタオルは大丈夫?
家族みんながこまめに手を洗っていれば、同じタオルを使うことはそんなに心配しなくてもいい。※ノロウイルスのように微量で感染するようなウイルスの場合は、タオルの使い回しで感染する。
どれくらいの量で感染するかは、ウイルスの種類によって違うんだ!
他人と同じボールペンを使うのは大丈夫?
感染リスクはある。ボールペンに限らず、外で何か触ったらすぐに手を洗うようにする。「今手にウイルスがついている」という気持ちを持って行動する。
外に行くときは、ウエットティッシュかぬれタオルを持ち歩いて、手や指先をこまめに拭くにゃー。
抗体検査
抗体検査をすれば安心できるの?
抗体検査は個別の診断には一切使えないということを理解していない人が非常に多い。抗体検査は精度も低く、今感染しているか過去に感染したかがわかるだけのもの。
日本の感染(集団免疫)率は、抗体検査をあまりしていないのでわからないのだが、抗体が陰性でも陽性でも安心はできない。しかし陰性(陽性)だから安心という風に勘違いする人が続出してしまうから、抗体検査をする際には注意が必要。
えーーっ!抗体検査すれば安心できると思ってたにゃー!大ショックにゃー!
これ勘違いしてる人すごく多いよね。ボクの周りはほぼ全員が勘違いしてたよ。
抗体検査の目的とは?
今、地区別に集団免疫がどれだけついているのかを知るための目安となる。その目安が政策決定の上で極めて重要になるのでやる必要がある。しかし抗体検査の利点と欠点をきちんと熟知した先生方が使わなければ、意味はなくなる。
少し補足すると、集団免疫がどの程度ついているかによって政策…かなりな長期戦を覚悟するか、比較的短期間で終わるのか予想できるので、状況に応じた政策を打ち出せるようになる。出口戦略を考える上でも重要。
日赤(日本赤十字社)には血液のストックがあるので、例えば日赤が本気になれば、きちんとした抗体検査はできると思う。
あにゃにゃ。抗体検査は、どれくらいの人が新コロにかかったかの目安に使えるにょかー。
感染率がわかれば、終息まであとどれくらいの期間や対策が必要かって考える目安になるよね。
新しい生活
感染機会8割減のルールを守ることが大切!
医療崩壊の危機があるときは、できるだけ自宅にいて医療崩壊を防ぐ必要があるが、家に閉じこもる生活をずっと続けることは困難である。コロナではなく経済的な理由で亡くなる方も増えてくる。
外に出るときは、全員が感染機会8割減のルールを守る。これを一人ひとりが徹底するだけでも、感染爆発を防ぐことができるだろう。
緊急事態宣言が解除されたら、にゃんこ先生ルールを守って感染しないように気をつけながら外に出るにゃー。
新コロがない世界みたいに行動してたら、何度も感染爆発しちゃうから、気をつけよーっと。
家にいる?ルールを守りながら外に出る?
外出自粛を続けて人との接触機会を8割減らすと、経済が止まる(自粛)。ルールを守りながら外出して感染機会を8割減らせば、経済を止めずに生活できる(半自粛)。
もし外に出る生活を選ぶのであれば、感染拡大を防ぐため「感染機会を減らすルール」を守って欲しいと思うが、決して外出を勧めているわけではない。
家にいるかルールを守りながら外に出るかを決めるのは、あくまでも国民。自分自身でどうしていくのがいいのかを考える必要がある。
にゃんこ先生から見ると、新型コロナなんか弱いウイルスにゃー。
こんな弱々ウイルスに負けるなんて悔しいから、ボクはルールを学んで新しい生活をするぞー。
まとめ
今回は効果的な新型コロナウイルス対策について、宮沢孝幸さんのお話から学んできました。どんな内容だったか軽くふり返ってみましょう。
新型コロナから日本を守るという大きな目的の下、政治家の方とさまざまな専門家の方がタッグを組んで、政策に取り組んでいただきたいと切に願います。
今、日本は心を一つにして新型コロナと戦う時なのではないでしょうか。
みんな素直になって仲良く話し合うにゃ~。